源泉徴収の基礎知識

ギャラが銀行口座に振り込まれたんだけど、発注元に送った請求書の金額よりも少ない! もし請求金額の10%くらい少ない金額であれば、それは源泉徴収税が引かれているためです。

まとめ

  • 源泉徴収とは、報酬から税金(所得税)を差し引くこと
  • フリーランスにとって源泉税とは所得税の先払い
  • 確定申告をすると払いすぎた税金は戻ってくるので損得はない
  • 源泉税として報酬額の10%くらいが引かれる
  • 源泉徴収されない業種もある

源泉徴収とは所得税の仮払い、先払い

ギャラから税金を差し引いて支払うこと。これを「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」と言います。省略して「源泉」と呼ぶことも多いです。

たとえば、発注元が「ギャラは源泉して振り込みますね」と言った場合、「ギャラを振り込むとき、税金分を引いておくので、金額が少なくなるのでよろしくね」という意味です。請求した金額より少なくても、けっして発注元が金額を間違えたわけではありません。

発注元は源泉徴収した税金(源泉徴収税、源泉税)が自分の利益になるわけではなく、源泉徴収した金額をそのまま税務署に納付します。あなたに振り込む金額と、税務署に納付する金額を合計すれば、発注元から出ていく金額はちょうどギャラの金額と同じになるので、発注元として損得はありません。むしろ、計算や納付の手間がかかる分だけマイナスです。

あなたの立場からしても、損をしていることはありません。源泉徴収は所得税の仮払い、先払いです。翌年の春に税務署に確定申告書を出せば、払いすぎになっていた所得税が戻ってくることがあります。確定申告で税金が還付(かんぷ)されるのは、先にギャラから源泉徴収された税金が税務署に支払われているためです。確定申告によって正しい税金の金額を計算して、払いすぎになった分が戻ってきます。

国が税金の取りっぱぐれを防ぐための制度

源泉徴収という制度があるのは、国が所得税の取りっぱぐれを防ぐため。フリーランスの場合、確定申告で税金の金額を計算して、その金額を税務署に納付します(これが原則)。しかし、これでは確定申告をせずに税金も納めない人がいっぱい出てくるので、あらかじめ一定割合(原則10.21%)の税金を先払いさせる制度ができたのです。源泉徴収されている税金があるから、払いすぎた分を取り戻そうとしてみんな確定申告をするわけです。

会社員も同様です。会社からもらう給料から所得税が源泉徴収されています。さらに、会社員の場合は、確定申告に当たる手続きとして「年末調整」というものがあり、自分ではいっさい所得税の手続きや納付をする必要がありません。会社員が自分で所得税の申告をするのは、給料以外に収入があったとき(たとえば、不動産や仮想通貨で利益を得たとき)、ふるさと納税をしたり、医療費がかかったりして還付を受けるときだけです。

源泉徴収で差し引かれる税金は「所得税」だけです。「住民税」は確定申告の後(6月ごろ)に自治体から通知が送られてくるので、自分で納付する必要があります。3月に確定申告をして所得税が還付されても、その金額がそのまま住民税の支払いで消えてしまうこともあります。

源泉税は報酬額の10.21%

源泉徴収する割合は、原則として報酬額の10.21%です(100万円超だと割合が変わってきます)。0.21%という端数は、東日本大震災からの復興にあてる「復興特別所得税」の分です。

源泉税の金額を計算する方法は2種類あって、どちらで計算するかで受取額が変わってきます。どちらの方法で計算するかは支払う側にまかされているので、通常は受け取る側が「こっちで計算してくれ」と指定することはできません。

  • 消費税込みの金額に10.21%をかける
  • 消費税抜きの金額に10.21%をかける

請求額110,000円(税込)の場合

消費税込み
源泉税 110,000円×10.21%=11,231円
受取額 110,000円-11,231円=98,769円

消費税抜き
源泉税 100,000×10.21%=10,210円
受取額 110,000-10,210円=99,790円

消費税抜きで計算した方が、受取額は1,021円多くなる

消費税込みで計算されると受取額が少なくなりますが、これは先払いした金額が大きくなっているだけです。確定申告をすればその分だけたくさん戻ってくるので、どちらが損とか得とかはありません。税金を先に払うか、後に払うか、タイミングの違いです。

源泉税の計算は支払う側(発注元)がやってくれます。そして、源泉税を引いた金額を支払います。受け取る側(フリーランス)が請求書を作るとき、源泉税のことを考える必要はありません。

しかし、発注元によっては「請求書に源泉税の金額も書いてくれ」とリクエストしてくることがあるかもしれません。その場合は、消費税込みか抜きかどちらの方法で源泉税を計算するのか、発注元に確認してください。できれば、「報酬の金額」「源泉税の金額」「支払額」を3つを先に計算して、その金額に間違いがないかを発注元に確認してもらってから請求書を作った方がいいでしょう。

源泉徴収されない業種もある

どんなフリーランスでもギャラから税金が源泉徴収されるわけではありません。法律で源泉徴収が必要な報酬が決まっていて、そこに含まれていない報酬は源泉徴収されることなく、請求額がそのまま振り込まれることになります。たとえば、エンジニアやプログラマーの報酬からは源泉徴収の必要がありません。

グレーゾーンもあって、たとえばウェブ制作の場合、それをデザインと考えるなら源泉徴収が必要だし、プログラミングと考えるなら源泉徴収は不要です。そのため、同じ仕事をしていても、発注元によって源泉徴収されたり、されなかったりすることがあったりします。報酬を受け取る側としては、税金を払うタイミングの違いにすぎないので、あまり気にしないでください。源泉徴収をしないことで税務署から怒られるのは支払う側で、受け取る側が怒られることはありません。

源泉徴収されない業種であれば、確定申告によって所得税が還付されることはなく、申告と同時に所得税を納税することになります。特にエンジニアさんは収入が多い割には必要経費があまりかからず、納付すべき所得税も高額になりがちです。確定申告の時期に「税金を払うお金がない!」なんてことにならないようにご注意ください。

なお、支払いは3月の「所得税」だけではありません。6月になると「住民税」「国民健康保険」の支払いも出てきます。他にも「消費税」「事業税」「償却資産税」「自動車税」などの支払いが必要になることもあります。

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