フリーランスのための「領収書」の基礎知識

Q
領収書を保存していないとどうなる?
A

税務調査のとき、困ったことになります

 事業による所得は、売上から経費を引き算して求めます。この経費の金額が正しいものであることを証明するため、領収書などを保存するように法律で決められています。
 確定申告のとき、領収書を税務署に提出する必要はありません。しかし、後日、税務調査において領収書を見せるように要求されることがあるため、領収書を適切に保管しておかなければなりません。
 もし税務調査のときに領収書を提示することができなければ、経費の金額を証明できませんから、追加で税金を支払うことになるかもしれません。悪意を持って経費の金額を水増ししたと判断されたら、脱税として処分される可能性もあります。

Q
領収書はどれくらい保存しておく?
A

領収書の保存期間は7年

 領収書は7年間の保存義務があります。申告が終わっても捨てないで保管しておいてください。
 個人事業主の場合、2021年分の領収書は2029年3月まで保存しなければなりません。正確には、その年の確定申告期限の翌日から7年間です。

Q
税務調査で領収書がない経費は認められないの?
A

ケースバイケースです。領収書なしでも大丈夫なこともあります

 税務調査において領収書を出すように求められたけれど、その領収書を紛失したとか、そもそも領収書をもらっていなかった、という場合はどうなるのでしょうか。領収書がないものがすべて経費として認められないというわけではありません。
 領収書がなくても経費を支払ったことが常識的に考えて明らかであれば、経費として認められます。たとえば、クレジットカードや銀行口座からの引き落としで通信費や水道光熱費を支払っていた場合、領収書がなくても携帯電話代や電気代の支払いであることは明らかなので経費として認められるでしょう。
 ただし、その支払いが高額なときなどは、「携帯電話会社への支払いにキャリア決済は含まれていませんか?」「実家とか他のところの電気代もまぎれこんでいませんか?」ということになるので、やはり領収書は保管しておいた方が安心です。
 反対に、領収書があったとしても、その支出が必ず経費として認められるわけではありません。個人事業主にとって必要経費と認められるのは、事業に直接関係した支出に限られます。税務調査において関係性をしっかり説明できなければ、その支出は経費として認められない可能性があります。結果として所得が増え、追加で税金を支払うことになります。

Q
レシートでも領収書の代わりになる?
A

レシートでも大丈夫

 支払いの事実を確認できるものであれば形式は問いません。わざわざ手書きの領収書を作ってもらう必要はなく、レシートでも大丈夫です。むしろ手書きのいい加減な領収書より、何を購入したかが明記されたレシートの方が証拠能力は高いと言えます。
 領収書では以下の項目が明確になっていなければなりません。

  • 日付
  • 金額
  • 内容(ただし書き)
  • 発行者の名称

 ただし、以上の項目がそろっていないと無効というわけではありません。抜けている項目があれば、気付いたときにその項目を書き加えておきます(消費税の課税事業者は、保存すべき領収書について条件が定められているため、項目が欠けた領収書では問題が生じる恐れがあります)。
 なお、金額が大きな買い物の場合(万円単位の買い物)、税務調査でトラブルになることを避けるため、きちんとした領収書をもらっておくことをおすすめします。特に、クレジットカードや銀行振込ではなく現金で支払ったときは注意してください。宛先やただし書きも記入してもらい、さらにハンコもあれば安心です(金額が5万円以上の領収書では印紙も必要になります)。

税込金額が5万円以上であっても、税抜金額が5万円未満で、消費税の金額を記載しているなら、印紙を貼る必要はありません。また、紙ではなく、PDFファイルなどの電子データで領収書を送付するときは、5万円以上であっても印紙は不要です。

Q
クレジットカードの明細書は領収書代わりになる?
A

内容が分からないので明細書だけでは不十分です

 毎月、クレジットカード会社が発行する明細書ですが、ここに記載されているのは利用日と支払先、金額だけです。明細書を見ただけでは、何のために支出したのか分かりません。それぞれの内容が分かる資料も保存しておくべきです。たとえば、ネット通販で消耗品を購入したのであれば、その注文明細を保存しておきましょう。
 一方で、明細書だけで内容が分かる支出もあります。電気代の支払いであれば水道光熱費であることは明らかなので、税務調査でも問題になる可能性は低いです。こうした支払いなら別途資料がなくてもかまいませんが、できれば利用明細もあわせて保存しておけば確実です。
 もちろん例外もあって、たとえば、電力会社への支払いが異常に高額なときは、税務調査においてその明細を求められる可能性があります。

通信会社へ支払いについては、通信料金のみ毎月定額を支払っているなら、それが通信料であることは明らかなので、明細書を保存していなくても問題になる可能性は低いです。しかし、キャリア決済を利用していたり、端末の分割払い代金が含まれていたりするときは、明細書を保存しておいた方がいいでしょう。

Q
領収書に宛名がなくても大丈夫なの?
A

必須というわけではありません

 宛名がなくても基本的には大丈夫です。経費を支払ったことが客観的に明らかであれば、宛名がないレシートでも問題はありません。
 たとえ、宛名が他人の領収書であっても、その人に立替払いしてもらったもので、最終的には自分が支払ったのであれば、その領収書を自分の経費の証明として使うことができます。
 一方、宛名が欠けていることが問題になることもあります。たとえば、数十万円という高額の領収書に宛名がない場合を考えてみましょう。銀行振込で支払いの記録が残っているとか、購入したものが手元にあるとか、支払いの事実を別の方法で証明できるなら大丈夫です。しかし、支払いの記録がなく、購入したものも残っておらず、宛名のないあやしげな領収書しか支出の証拠がないとなれば、税務調査のとき、本当に経費を支払ったのかが問題になる可能性が高いです。
 ただし、消費税の課税事業者は、保存すべき領収書について条件が定められているため、宛名なしの領収書では問題が生じる恐れがあります。

Q
領収書にただし書きは必要か?
A

必須というわけではありません

 手書きの領収書を作ってもらう場合、「ただし書きはどうしますか?」と聞かれることがあります。特にルールがあるわけではなく、内容が分かる言葉であれば何でも大丈夫です。
 重要なのは税務調査において、「この領収書の内容について説明してください」と言われたとき、きちんと説明できるようにしておくことです。ですから、焼肉屋の領収書であれば飲食代であることは明らかなので、お店の人にただし書きを書いてもらう意味はありません。
 むしろ重要なのは、どういう目的で焼肉屋で飲食したのかを分かるようにしておくことです。交際費となる飲食代については、領収書の余白に誰と会食したのかを記入しておいてください。

Q
領収書が発行されない場合はどうする?
A

支払った金額や日付、内容が分かるメモを残しておく

 領収書が発行されない支払い(電車やバスの運賃、自動販売機など)は、日付と金額、内容を記したメモを残しておきます。形式は決まっていないので、「出金伝票」(100円ショップでも購入可)でなくてもかまいません。エクセルなどの表計算ソフトで作成した表でも大丈夫です。
 請求書はあるけれど領収書がない場合(たとえば、請求書が送られてきて銀行振込で支払ったとき)、請求書を保管しておけば大丈夫です。取引の日付と金額、内容、相手先が明確になっていれば、領収書でなくてもかまいません。

Q
交通費はICカードへのチャージで計算していい?
A

チャージの金額ではなく、実際に使った金額が経費になります

 SuicaやIcocaなどICカードへのチャージ金額をそのまま旅費交通費として計上していると、旅費交通費の金額が多いときは税務調査で問題になる可能性があります。ICカードは交通費だけでなく、買い物にも利用することができるため、チャージだけでは何に使ったのかが分かりません。実際に使った金額だけを経費として計上してください。
 freeeでICカードを同期させているなら問題はありません。チャージは仮払いのような扱いになっていて、ICカードで支払いをしたときに科目を指定するようになっています。
 ICカードを同期させていない場合、ICカードへのチャージは事業主貸として処理してください。そして、ICカードでの支払いをメモしておき(エクセルなどで管理するのがおすすめ)、実際に使った金額のみを登録するようにします。

ICカードにチャージした時点で経費として計上した場合、そのICカードで支払いをした領収書も経費として入力すると、経費を二重に計上することになります。こうした間違いを避けるためにも、チャージ時には経費として扱わないようにすることを強くおすすめします。

Q
ネットでの買い物はどうすればいい?
A

利用内容が分かるデータを保存しておく

 品物と一緒に紙の領収書が送られてくれば、それを使います。注文日や金額、内容が分かるものであれば、納品書などでも大丈夫です。
 紙の領収書や納品書が送られてこないときは、通販サイトの注文履歴ページや受注メールなどのデータを保存しておきましょう。領収書という名前が付いていなくても、注文日や金額、内容が分かるものであれば領収書の代わりとして使えます。
 Amazonでは「注文履歴」のページから、楽天市場では「購入履歴」のページから明細や領収書を表示することができます。この内容をPDFファイルとして保存しておきます。
 なお、領収書が電子データとして発行された場合、ファイルとして保管してください。紙に印刷して保存することは認められていません(2022年1月以降)。

Q
領収書はきちんと貼って整理する必要がある?
A

整理方法は自由です。貼らなくてもかまいません

 税務調査で「×月×日の消耗品費の領収書を見せてください」と言われたとき、すぐ領収書を出せる状態になっていれば大丈夫です。法律には帳簿や領収書などの保存義務があるとは書かれていますが、保存の具体的な方法については定められていません。ですから、領収書はスクラップブックやノートなどにのり付けする必要はありません。
 私は、領収書を科目ごとに分類し、月別にホッチキスでとめ、封筒に入れて保存しています。他にも、クリアファイルを使って、月別に領収書を分類・保存している方も多いです。自分のやりやすい方法で整理してください。

Q
クレジットカードの利用伝票も保管しておく?
A

領収書などがあればとっておく必要はありません

 お店でクレジットカード払いをしたとき、レシートといっしょにクレジットカードの利用伝票が出てくることがあります。この利用伝票は保管しておく必要はありません。領収書やレシートなど他の書類で支払いの事実を証明できるためです。
 なお、飲食店などでクレジットカードの利用伝票しかもらえなかったとき、領収書の代わりにこの利用伝票を支払いの証拠として使うことができます。

消費税を納税している場合は注意!

 消費税を納税していて、本則課税の場合(簡易課税を選択していない場合)は注意が必要です。次の事項が記載された領収書や請求書を保存しておかなければ、税務調査を受けたときに問題となる恐れがあります。

  • 書類作成者の名称(2023年10月以降は登録番号も必要)
  • 取引の年月日
  • 取引の内容
  • 取引の金額(税率ごとの各金額、2023年10月以降は消費税額も必要)
  • 書類を受け取る側の名称(小売店や飲食店、タクシーなど不特定多数を相手にする業種では省略可)

簡易課税の場合は、売上の金額が決まれば、消費税の金額も自動的に決まるため、領収書の形式について気にする必要はありません。

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