交際費とは「得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」です。当然ながら個人的な飲食は交際費に含めることはできません。軽い気持ちで個人的な飲食を交際費にしてしまう人も多いですが、これも立派な脱税です。
税務調査の結果、個人的な飲食代を会社の交際費に含めたとして、多額の追徴課税を受けた事例を紹介します(東京地裁 令和2年3月26日判決)。
- ある会社の代表者が5年間にわたってクラブでの飲み代6607万円(合計利用回数372回)を会社の交際費として計上していた。
- その会社が税務調査を受け、個人的な飲み代は経費に当たらないと指摘を受けた。
- 会社はその指摘を受け入れて、飲み代を除いて修正申告を行った。
- 税務署は悪質な行為だとして、会社に対して重加算税を課した。
- 会社は処分の取り消しを求めて裁判まで起こしたが、処分がくつがえることはなかった。
代表者の方は、ひいきのホステスがいて、クラブでの飲み代だけでなく、同伴出勤やアフターでの飲食代も交際費に含めていました。そのほとんどは自分ひとりで利用したもので、事業関係者が同席することはありませんでした。また、ホステスが移籍すると代表者も移籍先の店について行ったとのことなので、これでは交際費に当たらないと言われても反論は難しいでしょう。
重要なポイントは、会社が指摘を受けて修正申告を行ったにもかかわらず、税務署が重加算税を課したところです。通常、修正申告を行った場合、過少申告加算税として追加税額の10~15%を支払うことになります。正しく申告しなかったペナルティーですね。しかし、今回の事例では「事実を仮装した」として重加算税35%が課されています。より重いペナルティーが課されたことになります。
ちなみに、この会社は修正申告によって約1190万円の税金を追加で支払い、その追加分に対して約420万円の重加算税が課されています。この他に延滞税(利息のようなもの)もかかり、その金額は100万円は超えてくると思われます。
1190万円は本来支払うべき税金だったので仕方ありませんが、不適切な処理によって500万円以上も余分に税金を取られることになったのです。
軽い気持ちで個人的な飲食を交際費の中にまぎれこませてはいけません。税務調査を受けたとき、自信を持って交際費だと主張できるものにしてください。
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