フリーランスが法人成りした後の社会保険の手続き

国民健康保険に加入していたフリーランスが法人成りして、社会保険に切り替えるための手続きを見ていきます。

ここで言う社会保険とは「健康保険(及び介護保険)」「厚生年金保険」のことです。この2つはセットで手続きを行います。どちらか片方だけ加入することはできません(高齢者を除く)。

個人事業主法人成り
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役員報酬の額が決まったらすぐに社会保険の加入手続きを

法人を設立したら3カ月以内に役員報酬(会社から自分に対して支払う給料)の金額を決めます。6月中に設立したのであれば、8月末までには役員報酬の金額を決めてください。

売上の予測が難しくて報酬金額を決められず、給与支払いが4ヶ月目以降にずれた場合は、その年度は役員報酬を会社の経費に入れることができません。これは、利益操作を防ぐため、役員報酬を会社の経費とするには以下の2つの条件を満たす必要があるからです。

  1. 毎月同額の給与を支払うこと
  2. 給与の金額は年度開始から3カ月以内に決めること

給与の金額が決まったら、日本年金機構(年金事務所)に社会保険の加入書類を提出します。

  • 新規適用届:会社として社会保険に加入するための書類
  • 被保険者資格取得届:実際に社会保険に加入する人の情報を届け出る
  • 被扶養者(異動)届:子どもや配偶者などを扶養しているときに届出書

届出の期限は、社会保険に切り替える日から5日以内です。期限を過ぎても特にペナルティーはなく、給与支払いの実態があれば社会保険の加入はできます。しかし、追加で書類の提出を求められたり、加入手続きに時間がかかったりすることがあります。

たとえば、役員報酬の支払いを7月から開始することに決めたら(資格取得日は7月1日)、7月6日までに届出書類を提出してください(期限が土日祝日ならその翌日)。なお、実際に役員報酬を支給する日は7月末日でも翌月10日でもかまいません。給与の計算期間が始まる日が社会保険の資格を取得する日になります。

手続きは管轄の年金事務所の窓口で行うのが確実です(会社の本社を管轄する年金事務所です)。時間がなければ、書類を郵送して提出することもできます。書類は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。

健康保険・厚生年金保険の届書

加入書類を提出した後の流れ

加入書類を提出すると、だいたい一週間くらいで日本年金機構から手続き完了の通知が送られてきます。4月など入退社が多いシーズンだと1カ月近くかかることもあるようです。

  • 適用通知書
  • 健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書

この書類は必ず保管しておいてください。特に適用通知書に記載された「事業所整理記号」「事業所番号」は、今後の社会保険の手続きに必要となるため、メモしておくことをおすすめします。

加入書類に不備があったときは、加入書類が返送されてきます。いっしょに修正事項を記載したメモが付いてくるので、書類を修正したり、追加書類を準備して、指定された期限までに提出してください(年金事務所に提出するか、日本年金機構に郵送する)。

上記の書類からやや遅れて、会社の住所あてに健康保険証が送られてきます。被扶養者(配偶者や子どもなど)の健康保険証は、別便で少し遅れて届くことがあるようです。

もし適用通知書や健康保険証が1カ月たっても送られてこなければ、管轄の年金事務所に問い合わせてください。

登記上の住所がバーチャルオフィスになっているときは注意してください。手続き完了の通知や不備があったときの通知はバーチャルオフィスに届きます。郵便物を月末ごとに転送するような契約だと、不備があったときの対応が遅くなってしまいます。もしオプションで随時転送を選べるのであれば、社会保険の加入手続きが終わるまで(健康保険証が送られてくるまで)はオプションを追加しておくとよいでしょう。

国民健康保険の脱退の手続きを忘れずに

健康保険証が手元に届いたら、それまでの国民健康保険の脱退手続きを行ってください。通常はお住まいの自治体(市役所や区役所)です。国民健康保険組合(文美国保など)に加入していた人は各組合に脱退手続きの方法を問い合わせてください。

国民年金については特に脱退手続きの必要はありません。日本年金機構の中で処理が完結しています。

切り替え途中に医療機関を受診するときは注意しよう

役員報酬の支払いを7月から始めることに決めた場合、6月末日までは国民健康保険、7月1日からは新しい社会保険になります。しかし、手続きが順調に進んでも、新しい健康保険証が手元に届くのは7月中旬です。半月ほどは健康保険証が手元にない期間が生じることになります。

切り替えの途中に医療機関を受診するとき、国民健康保険の保険証を使ってはいけません。医療機関の窓口で「切り替え手続きの途中で、まだ新しい保険証が送られてきていない」と説明してください。

たいていの医療機関では、いったん医療費の全額を支払っておき、後日、新しい保険証を持参したときに差額を払い戻すという対応をとっています。もしくは、窓口でいったん全額を支払い「健康保険療養費支給申請書」を全国健康保険協会(協会けんぽ)に提出して払い戻しを受けることになります。

健康保険療養費支給申請書(立替払等、治療用装具) | 申請書 | 全国健康保険協会

このように、切り替えの手続きが遅れると面倒なことになるので、社会保険の手続きは早めにすませておくことをおすすめします。

社会保険料の支払いはどうする?

法人成りする前の国民健康保険料

国民健康保険については、脱退の手続きが終わるまでに納期限が来たものは支払うようにしてください。

国民健康保険の保険料は、4月から1年分(12カ月分)を、6月から翌年3月まで10回に分けて支払うのが一般的です(自治体ごとに異なる)。そのため、どうしても払った保険料と実際の保険料の差額が生じます。払いすぎであれば還付されるし、不足していたら追加で納付することになります。後日、通知が来るはずです。

法人成りする前の国民年金保険料

国民年金保険料が月払いであれば、厚生年金に切り替えるまでの分を支払うようにします。もし過不足があったとしても、後で精算されるので大丈夫です。

年払いなどでまとめて支払っているなら、払いすぎた分があとで還付されます。

法人成り後の社会保険料

日本年金機構から納付書が送られてくるので、郵便局や銀行などの窓口で支払います。また、納付書にはペイジーの番号が記載されているため、ネットバンキングで支払うこともできます。

7月に社会保険に加入した場合、7月分の保険料は翌8月末までに支払います。しかし、その納付書が送られてくるのは8月20日ごろです。納付書が来てから納付期限まで余裕がないため、毎月月末には忘れずに支払うようにしてください。

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