フリーランスでも売上が1000万円を超えると消費税がかかる ―消費税の納税義務についてしっかり理解しよう

年間の売上が1000万円を超えると、個人事業主であっても消費税の納税義務が発生します。どんな場合に消費税を納税することになるのか、消費税の仕組みを説明するとともに、なるべく納税せずにすむようにする方法を紹介します。

消費税分を受け取っていなくても納税の必要がある

たとえば、ライターの場合、「出版社からもらった原稿料には消費税は入っていないし、編プロに出す請求書にも消費税は乗っけていない。自分は消費税をもらっていないのに、なんで消費税を納めるのか?」と思われるかもしれません。

しかし、売上の金額には消費税が含まれているものとして扱われます。支払明細書や請求書などに消費税という項目があるかどうかは関係ありません。年間の売上金額に応じて消費税を納税することになります。

小売店やサービス業でも同様です。お客さんから消費税分はもらっていないという理屈は通用しません。売上には消費税が含まれているものとして、税額を計算して納税する必要があります。

2年前の売上金額で納税義務の有無を判定

売上が1000万円を超えたら、すぐその年の売上に対して消費税がかかるわけではありません。1000万円を超えた2年後に消費税の納税義務が発生します。たとえば、2020年に初めて売上が1000万円を超えたらなら、2022年の売上に対して消費税がかかります。

消費税には「基準期間」という概念があります。個人事業者の場合、2年前が基準期間となり、基準期間の売上によって納税義務の有無を判定します。つまり、毎年、基準期間=2年前の売上を見て、今年は納税義務があるかどうかを判定するのです。

2021年の基準期間は2019年です。2019年の売上が1000万円超であれば、2021年は消費税の納税義務があります。ここで、2021年の売上の金額は関係ありません。たとえ、2021年の売上が50万円であっても、2021年はその売上に応じた消費税を納税することになります。

2019年の売上は1000万円超だったけど、2020年は1000万円以下に減ってしまった。このケースでは、2021年は消費税を納めるけれど、2022年は消費税の納税義務はありません。たとえ2022年の売上が5000万円に急増しても、その売上に対して消費税を納める必要はないのです。

この判定は毎年行います。ですから、売上が1000万円前後をうろうろしている人は、年ごとに消費税の納税義務が生じたり、消えたりするわけです。

このルールには例外があって、1~6月(特定期間)の売上(または給与等の支払額)が1000万円を超える場合は、その次の年から納税義務が発生することがあります。フリーランスで半年間に1000万円以上の給料を支払う人はほとんどいないと思うので、この基準に引っかかる人はごく少数でしょう。

1000万円のラインは税込金額

ちなみに基準となる売上1000万円とは税込金額と税抜金額のどちらなのか。これは基準期間に消費税を払っていたかどうかで変わってきます。

基準期間に消費税を払っていない場合は、税込金額が1000万円を超えたら、その2年後に消費税を支払う義務が発生します。一方、基準期間に消費税を払っているときは、税抜金額で考えます。税込売上が1100万円を下回れば(税率10%の場合)、税抜金額が1000万円以下になるので、その2年後は納税義務がなくなります。

実は法律の条文を読む限りでは税込か税抜かはっきりしません。税抜金額を使うべきじゃないかと裁判所に訴えた人がいたのですが、消費税を払っていない年は、その売上に消費税は含まれていないので税込金額で判断すべきという判決が出ています(2005年、最高裁判決)。

飲食店や小売店では、家事消費にも注意してください。家事消費とは自分や家族で使った分です。飲食店なら仕入れた食材でまかないを作ったとか、小売店なら商品を自分用に使ったという場合、その分も売上に加算しなければなりません。お客さんへの売上が1000万円以下であっても、家事消費を加えると1000万円を超えてしまうなんてこともあります。

会社を作れば2年間は消費税を納めなくていい

新規開業した人の場合、開業後2年は原則として消費税の納税義務がありません。2年目は開業前なので、基準期間(2年前)の売上が存在しないという考え方です。だから、最初の2年間は、原則として消費税を納める必要はありません。

このため、売上が1000万円を超えたら会社をつくる人が多いです。会社でもルールは同じであり、基準期間の売上で消費税の納税義務を判定します。ですから、設立して最大2年は消費税を納めなくて大丈夫。

個人事業主として2020年の売上が1000万円を超えた場合、2022年から消費税の納税義務が発生します。ここで2022年に会社を設立して、そちらで仕事をするようにすれば、2022年と2023年は消費税の納税義務が免除されます。もちろん、当初2年間の売上が1000万円を超えていても大丈夫です。

最大2年というのは、会社の場合、暦の年度ではなく、事業年度で考えるためです。事業年度は何月に始まるか、長さは何カ月間か、自由に決められます。ですから、消費税を納める時期を先延ばししたいなら、会社の設立時、もっとも有利になるように事業年度を決めましょう。

会社と個人を行ったり来たりすればどうなるのか

それなら、2年ごとに会社と個人を行ったり来たりすれば、ずっと消費税を納めなくていいのではないか。また、2年ごとに新しい会社を作って、そこに売上が入金されるようにすればどうなのか。

残念ながらこんな方法は通用しません。実際に悪質な課税逃れとして、本来払うべき消費税に加えて、加算税や延滞税まで払うことになったという事例もあります。もちろん、消費税逃れの他に何か合理的な理由があれば別です。たとえば、「売上が増えてきたので会社を作ったけど、思うように売上が伸びなかったので個人事業に戻した」といった場合です。

このようにダミー会社を使って消費税を免れようという事例が続発したため、2011年には納税義務の判定の方法がちょっと変更され、基準期間による判定とは別に、特定期間というルールが追加されました。特定期間(個人事業主なら前年の1~6月)の売上(または給与等の支払額)が1000万円を超えたときは消費税の納税義務が生じます。フリーランスでこのルールに引っかかる人はほとんどいないとは思いますが、ある程度の会社であれば該当することになるでしょう。

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