お金を払っても経費にならないものがある! ― フリーランスの経費で注意したいポイントとは

今年は売上が増えて、来年は税金の支払いが大変になりそう。だから、課税所得を減らすために、年内にいろいろ買い物をして経費を増やそう。

そんなことを考えているフリーランスも多いはず。しかし、買い物をしたからといって、そのすべてが事業所得の経費になるわけではないところに注意してください。経費について注意したいポイントを説明していきます。

10万円以上なら減価償却が必要になるかも

10万円以上(青色申告なら30万円以上)のモノは、支払い金額のすべてを今年の経費にすることはできません。減価償却の必要があり、何年かに分割して経費にすることとなります。

自動車のように何年にもわたって売上に貢献するようなモノは、その利用期間にわたって購入代金を分割して経費にします。何年で分割するかは法令で決まっています。

たとえば、一般的な自動車なら6年です。240万円の自動車なら、毎年40万円(=240万円÷6)を6年にわたって経費(減価償却費)として分割計上していくことになります。しかし、減価償却費は月単位で計算するため、12月に納車されたら1カ月分の33,333円(=40万円÷12)しか今年の経費になりません。

だから、売上が急増したので、年末に大きな買い物をして節税しようとしても通用はしないのです。青色申告の場合なら、30万円以下でおさまるモノを買って下さい。

年内に納品され使い始めていないと経費にならない

今年の経費にできるのは、今年のうちに仕事で使い始めたモノに限られます。12月の下旬に注文して、手元にモノが届くのが年明けになってしまったら、それは今年の経費とすることはできません。

たとえ今年にお金を払っていてもダメです。納品が来年にずれ込んだ場合、帳簿上では支払ったお金を「前払金」として計上しておき、モノが届いた時点で「消耗品費」などの科目に振り替えます。

年末ギリギリに買い物をするのであれば、通販を使うのではなく、リアルの店舗に行ってモノを持って帰ってきて下さい。

材料を買いだめしても経費にはならない

飲食店の場合、保存がきく食材を年内に買いだめしておけば、経費が増えるんじゃないか、と思われるかもしれません。これもダメです。

今年の経費になるのは、今年の売上につながるモノだけです。たとえば、年末にワイン10ケースを10万円で仕入れたけれど、年内にお店で提供したのは1ケースだけ。それなら、今年の経費になるのは1ケース分の1万円だけ。

同じように、いずれは使うモノだからといって、切手を10万円分買ったとしても、通信費として10万円を計上できるわけではありません。他にもプリンターのインクやトナーを買いだめするとか。消耗品で経費にできるのは実際に使った分だけです。

本来は年末の時点で在庫がどれだけあるかを調査して、その金額を引き算しなければならなりません。しかし、すべてのモノを調べつくすのは無理ですよね。数千円とかの少額であって、常識的な範囲であれば、使っていないモノであっても今年の経費にして大丈夫。コピー用紙の枚数とかボールペンの本数を数えろ、なんてことにはなりません。

モノ以外については減価償却の必要はないけれど

減価償却が必要になるのは、形があるモノだけです。「固定資産」と呼ばれます。だから、10万円以上の支出であっても、モノでなければ減価償却の必要はなく、まとめて経費とすることができます。

税理士事務所に支払う確定申告の報酬が10万円を超えたとしても、減価償却なんて処理はしません。売上を増やそうとしてコンサルタントに100万円を支払えば、その全額が経費になります。

だったら、先々の分までまとめて支払ってしまえば、今年の経費を増やせるんじゃないか? と思われるかもしれません。たとえば、今年はたくさんもうかったので、家賃を3年分先払いしてしまおう。

当たり前ですが、こんな方法は認められません。今年の経費として計上できるのは、今年のうちにサービスの提供を受けたものに限られます。モノの場合と同じです。

たとえ3年分の家賃を支払ったとしても、今年の経費になるのは今年の分だけ。先払いした分は、来年以降の経費になります。帳簿上では「前払費用」として計上しておき、来年にそれを取り崩して経費にするという処理をします。

例外として、ソフトウェアや権利金(事務所の礼金、フランチャイズの加盟金など)は、一定の期間にわたって分割して経費にします。

前払いした費用を経費にできることもある

先々の分までまとめて払っても経費にならないと書きましたが、例外もあります。

よくある例としては、ネットサービスの利用料で年払いを選択したとき。freeeの利用料1年分として3万6000円を12月に支払ったみたいなケースです。原則から言えば、1カ月分の3000円だけが今年の経費にするのですが、継続的に利用するサービスであればまとめて今年の経費として大丈夫。

ただし、このケースでも経費にできるのは向こう1年分だけで、3年分をまとめ払いしたときは原則通りに処理することになります。また、今年はまとめ払いした全額を経費にしたけれど、来年は売上が減ったので原則通りに計算するみたいな操作もできません。一度決めたやり方を続けて下さい。

領収書を分割すれば高額な買い物でも大丈夫?

最後に、10万円(青色申告なら30万円)を超えるモノは減価償却の必要があるなら、この金額を超えないように領収書を複数枚に分割してもらったらいいんじゃないか。

普通に100万円で売っているものを、知り合いのお店だからといって頼み込んで25万円ずつ4枚の領収書を切ってもらう。これは完全にアウトですね。

難しいのが、別々でも購入できるけれど、個々では力を発揮しないモノ。組み合わせることで初めて役に立つようなモノです。

エンジニアがパーツを買い集めてパソコンを組み立てるとき。パーツの総額は30万円を超えるけれど、CPUやメモリーなど個々のパーツで見ると30万円に満たない。こんな場合だとまとめて1台のパソコンとして減価償却する必要が出てきます。CPUやメモリーなどそれだけでは仕事に使えませんよね。たとえ領収書が別々に分かれていたとしても、一体のモノとして扱われます。

一方、パソコンとソフトをセットで購入したとき。パソコンもソフトもそれぞれ30万円未満だけれど、同時に購入したので領収書に記載された金額は30万円以上になっていた。こうなると判断はちょっと微妙になってきます。

パソコンが特別な仕様になっていて、そのソフトと切り離して使うことができなければ、一体のモノとして減価償却が必要になるでしょう。反対に、パソコンもソフトもそれぞれ汎用的なもので、一般的に別々に販売されているのであれば、別のモノとして処理してかまいません。

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